第2回 3市1村連合プラスアルファで世界レベルの観光を推進

深井:今の世界の流れはイノベーションとマーケッティング戦略。このマーケティング戦略がいかに重要かと。これをしっかり行ったところがこれからは勝ち残っていくということですね。それと、人との交流ですね。

市長:実はこの辺は昔から飛騨市も下呂市も白川村も、松本市だって一体の地域なんです。今はたまたま高山市とか下呂市とか行政区域で言っていますけど、昔は信州の人とも常に行き来して、結婚したり、皆一緒です。
それで僕は市長になってから一緒に同じ方向を向いてやっていかなければいけないと思って、3市1村で飛騨首長連合を作りました。
これからは、金沢、富山、松本や美濃地方とも一緒になって大きいエリアで攻めていかないと世界に対抗できないですね。
外国に行くとわかりますよね。いかにこの日本のマーケティング戦略が点になりすぎているかということが。
中国に行っても商売の仕方が全然違う。こちらはやっぱりのんびりしている。行儀が良い、品が良い。それが取り柄なんだろうけど。
ただ、あんまりがめつくない方が良いとも思います。でもやっぱり押さえるところは、きちっと押さえていかないと駄目なんだろうなとも思います。
僕はもともと高山市役所の出身なので、マーケティングでも、今まで疑問に思っていたことを逆にちょっと実験的に試しています。
フランスと香港に駐在員を置いて派遣するのも冒険でした。どれだけの価値があるのか、ということをよく言われるのですが、それは5年後とか10年後に戻ってくることです。

現場がわからないのにこっちの方で絵を描いていても仕方がないと思いますからね。

日本にいながらに世界に発信することも

市長:今は駐日大使館、領事館に注目しています。現地に行かなくても東京に行くと世界一周ができます。彼らとコネクションを作って、トップセールスをするということを積極的にやっていこうとしています。 在外公館というのは、本国に現地の様子を伝えなければならないので、情報が必ず本国にいくわけです。そこで、我々も世界の公館が集まる東京で世界一周を一生懸命しています。 僕らの仕事はノック。ものを売るのは飛騨高山の皆さんですね。僕はノックしてドアを開ける係なので一生懸命やっている。 そんな意味で、来年度から我々は、飛騨高山という全体のブランド力を作っていかなければならないと考えています。 匠の技を持っている人がいたり、新しいスイーツづくりがあったり、農家の人も、みんながブランド力をつけていくという方向でいろんな業種の皆さんが一つにならなければならないですね。 そういうのが僕は「里旅」だったり、ものづくりの原点だと思います。

今までなかった働き方が、地方スタイルに

深井:最近、クラフトをやりたいから、お店やりたいから東京から戻ってきたという若い人に結構お会いします。
東京で電車通勤をしている人に「あなたの人生で無駄にしている時間はどれくらいあるでしょう、高山に来たらいったいどうなるか考えてみませんか」とお聞きしてみたいですね。

市長:白川村にあるトヨタの自然学校に勤めている人たちは、すし詰めの電車で帰りたくないって、皆そう言いますね。都会は収入も高いけど、その分支出も高く、また生活のリズムが何ともならない。自分の人生が人に左右されていて、毎日の行動が自分で決められない。例えば乗りたい電車があっても満員だったら乗れないとか、そういう状況です。自分の思いと置かれている現実とのギャップがすごくありますよね。
そこで問題は、『どれだけここで生活ができるか』ということになり、これは行政の役割になります。ある人に言わせると、今までの移住とか、地方で住みたいというような志向があった人たちは、仕事は一つと考えすぎだって言うんですよ。農業なら農業、クラフトならクラフトって。
一つの仕事で生活を成り立たせようとして地方に来るけど、それは大きな間違いで、地方はそれほど豊かじゃないわけだから、一つの仕事で子どもを産んで育ててっていうのはなかなか難しい。
そうすると、一つの仕事はメインになるけど、もう一つのサブ的な仕事もこなしていかなければならない。今までなかった働き方、多職種的みたいな勤務形態がこれからは求められてきますよね。

深井:それは出来るようになってきていると思います。ITのこれだけの変化はそれを可能にします。先ほどおっしゃった仕事の中身もすべて変わってきますね。

永住希望の若い方へ

市長:「無駄な時間を過ごしていないか?もう少し人生の中で幸せを感じながら過ごさないか?」と伝えたいですね。ここはゆとりをもって生活ができるところです。だから金儲けをしたい場合はこっちでは無理かもしれない。
最終的に『家族』というのは、自分の人生にとっては支えにもなるし、栄養素にもなるし、人間としての喜びみたいなものがあるんですよね。
家族生活や自分が満足して過ごせる場所として、ここ飛騨高山は最高だと思っています。空気も水もきれいだし、常に自然の中で地球と一体となって生きているという場所は最高です。
もし、若い人たちが住むときに足らないものがあるというなら、行政なり大人なりの周りが環境を作ってあげる。それの具体的なやり方は自分で考えてくれたらいいけど、困難な障害があるなら、必ず我々が取り除いてあげるから、安心して来てほしいと思います。

世界から日本に来る方へ

市長:「日本見たけりゃ高山おいで」と伝えます。
例えば大都市にあるような虚構の世界を見ても、本物の日本や本来の日本人は感じられないと思います。
日本の中山間地の飛騨高山は『本物』です。地に着いた、土臭い、そして、鎧を着ずに人と接することができるところなんです。
この人どう思っているだろうかとか、こんなこと言ったら何て言われるとかということを思わないで、すぐ胸襟を開いて話ができるというような、そういう場所です。

そういう場所に、外国の人たちは来るべきだと思うし、ここで日本の文化だとか、伝統だとか歴史だとか、生きざまだとか、風習だとかというものを体感して帰っていただいて、新鮮な印象を持って、デンバー市長のように地元に帰っていただければと思います。



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