高山市長 国島芳明(くにしまみちひろ)
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株式会社サイエンスネット 深井隆司(ふかいたかし)社長

株式会社サイエンスネット‥1998年創業。岐阜県大垣市に本社を置くIT会社です。

第1回 飛騨高山の3つの特徴にホスピタリティを加えて

深井:唐突ですが高山の観光を促進するために「情報パック」というものを作ると良いと思います。例えばテクノロジー(お菓子を作ることも含めてテクノロジーですが)これらを価値のあるパッケージにして、それがうまく伝わると世界の観光ニーズを更に取り込めると思います。

市長:飛騨高山の3つの特徴の一つ目は、飛騨高山地域はものづくりが中心の地域だということです。『飛騨の匠』と言われる所以です。
二つ目は、飛騨高山には凝縮された『日本』が色濃く残っているということです。2005年に近隣町村と合併して高山市は日本一面積が広い市となり、この広い地域のそれぞれの地域の特徴的な要素の混在が、日本の文化、日本人の人情が端的にわかるようになっているわけです。
三つ目は、類を見ない自然景観と自然の恵みを直接得ることができるということです。
温泉や景観、空気などの自然の恵みから、訪れる人が元気になってもらえるところだと思っています。

この3つの特徴に、いかにホスピタリティを加えるかということが、高山市の観光のポイントになると思っています。いわゆる「おもてなし」という言葉がありますが、セオリーどおりにするというより、いかに一人ひとりの事情に寄り添っていけるか。マニュアルどおりではない対応が必要だと思っています。
今までは地域の資源、人材、お金、水も空気も全国に提供してきました(笑い)。でもこれからは逆に我々が得て、蓄積していくことで、黒字にもなり、住みやすくなっていくことを目指していきます。

その切り口が先ほどの3つの特徴とホスピタリティで、今の高山は海外からの観光客も増えていますが、ブームで終わることなく、漢方のようにゆっくりと効いてくるようになると良いと思います。

私たちは3年、5年という短いスパンで物事を見ているのではなく、今、高山に住む子どもたちが大人になった何十年か先にちゃんと良い環境を残せられているかどうか、私たちが大人として背中を見せてあげられるかが重要になってくると思っています。

『五感』で感じる交流体験を

深井:実は私は大阪生まれです。「岐阜」と聞くと高山が思い浮かびますがそれ以上に知る由がなく、海外の人も「富士山」とか「高山」は知っているけどそれ以上はということもあるのではないでしょうか。それがもったいないかなと思いました。
高校生とか大学生などの早い段階で、また海外の人たちにも高山に触れていただくことで、あそこで感じた、体験した、触れ合った、ああいうのが心に残っているというのがあれば、彼らが大きくなったときに『僕の故郷は高山です』と言い出すと思います。そのためのプログラムを何か作れないかなと強く感じています。それが初めに言った「情報パック」につながります。

市長:体験というのはまさしくそうなんですよね。高山市は55年前にアメリカのデンバー市と姉妹都市提携をしました。それから、数年おきに高校生の相互派遣をやっています。
その第一回の高校生派遣でデンバーから高山に来た学生が、今、アメリカのデンバー市の市長です。
彼が言うにはデンバー市の市長となり、高山市と都市提携の交流するのは当たり前だけど、高校生の時に高山でいろんなところに行ったことや人と触れ合ったことが印象に残っている。だから、高山との交流が通常の都市提携という関係じゃなくて、自分が体験してよかったから、今の交流もあると言います。
ちょうど同じ時期にお互い市長になったものだから、そんな話をしました(笑い)。さらに去年だったか、彼の子どもが高校生で高山に来てくれました。そういう若い人たち、感受性豊かな時代の人たちにとって高山が一生残る思い出になると良いと思いますね。

我々は生き残っていくための戦略を作らなければならないですね。それは一人じゃできないわけで、まずは市役所の職員たちの協力を得て、その次は外部のいろいろな団体がいてくれて、さらには県だとか国だとかの協力を得てという風に広がっていくわけです。そういう意味では今の我々は、条件的には非常に恵まれていると思っています。

『飛騨高山』は頑張る人のサポーターに

深井:世界の若い層に情報発信を! やはり、ぱっと発信できるのは若い層ですね。
今、我々はスイーツを作ろうとか、若い人に向けた切り口の企画ですが、楽しくないと面白くないよね、楽しくないと来ることないよねという言葉があがります。
でもその楽しいことが千差万別なんですね。芋を掘るのが楽しい人もいれば、スイーツを作るのが楽しい人、清流を見ているだけで楽しめる、魚釣りをしているのが良い、いろいろあると思います。
体験してもらって感じたら『高山は忘れません』ってなると思います。

市長:その通りですね。そこで僕が言っているキーワードは「本物」です。
生き残っていくものが本物だし、相手が感動を受けるものも本物だと思っています。そもそも「作られたおもてなし」に接するとわかってしまいます。
観光は、本来はものを見に行くのではなく、人と人との触れ合いで初めて成り立つんです。その場所の生活や歴史、生きざまや文化を感じに行くんですよね。
確かに教科書に載っていたものを見に行くこともありますね。でも、見ただけでは感動にならなくて、その中にプラスアルファで、必ず人が介在しています。ということは、人の生きざまみたいなものが本物で、そこにあわせて建物とか食べ物も本物志向でいかなければならない。みんなそうです。『本物』が最後は勝負を決めるだろうと思いますね。
もう一つは、こういうことを言うと、あいつ神がかっているんじゃないかと思われるかもしれないですけど(笑い)。
飛騨高山に来たら、人間として生物として浄化されるというような、体と精神も含めて元気になってそれぞれの場所に帰っていただいて、またそこで頑張っていただけたらいいな、という思いがものすごくあります。
人間は、地球の中の一つの物体で、地球の生産物だから、地球という大地の動きからは逃れられないですよね。ということは、この地球の動きに一番近く接するところが、いわゆるパワースポットで、その場所のひとつが、ここ、飛騨高山の地だと思います。温泉なんて本当に地球の息吹ですよ。
飛騨高山は元気になれるところなんです。温泉に入って感じる人もいるし、乗鞍や穂高の山に登って自然の中で感じる人もいるし、朝市のおばちゃんと何気に話をして、そのことによって忘れかけていた人々の生活などを感じる人もいるわけです。
そういう場所である高山に訪れて、また元気に元のところで生活しようと思って帰っていただければと思います。
飛騨高山は訪れた人の元気を取り戻すサポーターの町です。


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