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高山の歴史には、金森氏時代(1586年~1692年)とその後の幕府直轄地(天領)時代という歴史的背景があります。角正(かくしょう)様は高山の歴史と深い結びつきがあり、200年以上精進料理を継承されてきた岐阜県で最も古い料亭。高山の武家屋敷街の一角にある建物は250年を超える趣深い佇まいで、敷地の中の全てが市の重要文化財でもあります。今回は角正12代目当主の角竹正至様にお話しをお伺いしました。
飛騨高山の魅力はどんなところですか?
私どもの先祖は江戸の郡代役の御付の料理人でした。江戸から一緒にこの地にやってきましたので、元を辿れば、実は私どもの料理は江戸の料理だったようです。当時は高山にいながらにして鯛や平目、鱒など、この土地以外の食材で料理をしていました。当時の“ご馳走”という言葉は“馬に乗って走り回り、食材を探すこと”が本来の意味としてありますから当然なのかもしれません。
当時は、武士は武家屋敷街、町人は町人街と住居地区域が定められていましたので、料理屋となれば商家に当たるところですが、角正は武家屋敷街に居を構えていました。おそらく御付きの料理人ということで、このような特別な場所が許されたのではないでしょうか。また、料理人として郡代家だけでなく、その家来の料理も賄わせてもらっていたようで、そのお料理に使用したのがアユやタケノコ、マツタケなどの飛騨高山の土地の食材でした。
また、今では飛騨牛は当たり前のように使用されていますが、もともと料亭ではすっぽん以外の四足は使ってはけないという文化もありました。現代の料亭の魅力というのはその土地のものをどれだけおいしく提供できるかに変わってきていています。このように、私たちはだんだんと変化していく時代の流れに沿いながら、できるだけこの飛騨高山の文化を良い形で残したいと思っております。
そして、高山には外国人観光客がすごく多いですね。あくまで私見ですが、高山の歴史的な風景や風習が魅力に映っているのなら、あまり外国人の好みに合わせようとせず、自信を持ってありのままの日本、ありのままの高山をアピールできたら、グローバル化が進む現代でも日本文化が認めてもらえるのではないでしょうか。“昔のままを遺す”ことで“古い町・歴史の町高山”としてグローバルに通じていけるような気がします。その観点から見ると既に高山は町や景色の保存・維持に力を入れており、歴史を貴重な財産として守っていることに魅力を感じています。
力を入れていることは何ですか?
角正においては12代続いた伝統を受け継ぎ、私ども自身も魅力にならなければならないと思い日々努力を続けています。例えば、当店の建物や造りなどはできるだけ原型をとどめた状態で残していきたいと思っています。建物も庭も当時のままですから、私どもの建物を介して当時の建築技術も残していけますし、研究もできます。
外国人のお客様には、当店では食材の説明に困らないレベルでの英語対応もしています。当店にお越しいただける外国人の中には、日本中を旅行してきた最後に立ち寄りいただく場所が高山で、私どものお店ということもよくあります。日本文化に精通されている方も多く、基本的にはお箸に困られるようなことはないです。その方々に日本での最高の思い出が高山であり、当店で最高に良い食事を味わっていただけるよう、きめ細かいサービス “言葉にならない”サービスを提供していきたいと思っていますし、『ここが日本で一番喜んでいただける場所』を目指す意気込みでやらせてもらっています。
観光で高山へいらっしゃる方へ一言お願いします。
高山にいらっしゃったら体験していただきたいことは、せっかくこれだけ古いものが残っていますので、少しでも触れていただきたいですね。多くの人が『古いものが良い』と思っているのは何故でしょうか、そんなところに着目していただいて、建物を見ていただいたくといかがでしょうか。古いものは不便だったりもしますけれど、江戸時代がなかったらこの建物や文化は育まれなかったんですね。当時にさかのぼって、「なぜ、江戸時代にこうなったの?」と想像しながら、壁のひとつにも意識することで見えてくるものが全く違ってくると思います。
昔の建物には縁側の素材、天井の板の素材、壁の色全てに意味があり、当時の格式に基づいた内装などがあることなども知った上で歴史を感じることができたら、高山がより一層魅力的になると思いますよ。
【高山市重要文化財の庭】
ゆったりと食事をしながら四季折々に表情を変える庭を楽しめます。
- 精進料理 角正
- 住所 〒506-0838 岐阜県高山市馬場町2-98
- 0577-32-0174
- 通販ページ : http://www.kakusyo.com/
一皿ずつ日本のおもてなしの心が込められた精進料理は繊細で華やか。